ヨシムラコーヒーラボ #3|コーヒーをおいしく淹れるお湯の温度。温度管理と予熱の大切さ
2026.11.03 17:48
ハンドドリップでコーヒーを淹れるとき、豆の量やお湯の量と同じくらい大切なのが「お湯の温度」です。
同じコーヒー豆を使い、同じ分量で淹れていても、お湯の温度が変わると抽出の進み方が変わり、味わいにも違いが生まれます。
今回は、お湯の温度がコーヒーに与える影響から、
温度設定ができる電気ケトルの便利さ、電気ケトルがない場合の温度調整方法までご紹介します。
さらに、抽出前にドリッパーやサーバー、飲むためのカップを温めておく理由についても解説します。
まずは90℃前後を基準にしてみましょう
ハンドドリップでは、一般的に90〜96℃前後のお湯が抽出温度の目安として使われています。
ヨシムラコーヒーでは、まずは90℃前後をひとつの基準にして、豆の焙煎度や好みに合わせて調整していくことをおすすめします。
ただし、90℃がすべてのコーヒーにとって唯一の正解というわけではありません。
浅煎り・中煎り・深煎りといった焙煎度や、豆の種類、挽き目、抽出時間によっても適した温度は変わります。
まずは基準となる温度を決め、そこから少しずつ変化をつけて、自分好みの味わいを探していきましょう。
なぜお湯の温度で味が変わるの?
お湯の温度が変わると、コーヒー粉に含まれる成分が水に溶け出す速さや、抽出の進み方が変化します。
一般的に、温度が高いほど成分の溶解や抽出は速く進みやすくなります。反対に温度が低いと、抽出は比較的ゆっくり進みます。
そのため、同じ挽き目や注ぎ方で淹れた場合、温度によってコーヒーの濃度や味わいのバランスが変わることがあります。

温度が低めの場合
温度が低いと、コーヒー粉から成分が溶け出す速度は比較的ゆるやかになります。
同じ時間で抽出した場合、十分に成分が抽出されず、酸味が目立ったり、味わいが薄く感じられたりすることがあります。
温度が高めの場合
温度が高いと、成分が溶け出す速度が速くなりやすく、同じ条件なら濃度や抽出率が高くなる場合があります。
その結果、苦味やコクがしっかり感じられることもありますが、抽出条件によっては渋味などが目立ち、味わいのバランスが崩れることもあります。
ただし、低温なら酸っぱくなる、高温なら必ず苦くなるという単純な話ではありません。
実際には、豆の種類や焙煎度、挽き目、注ぎ方、抽出時間などが組み合わさって味わいが決まります。
研究から見る、お湯の温度と味わいの関係
2020年に発表されたドリップコーヒーの研究では、87℃・90℃・93℃の3つの温度で抽出したコーヒーを比較しています。
この実験では、温度ごとに挽き目や抽出時間などを調整し、コーヒーの濃度と抽出率をそろえました。
その結果、抽出温度による官能評価の大きな違いは確認されませんでした。
この研究から分かるのは、温度が重要ではないということではありません。
温度は抽出の進み方を左右する要素のひとつであり、最終的な味わいは温度だけでなく、抽出全体のバランスによって決まるということです。
まずは温度を一定に保つことから始めてみましょう。

温度設定ができる電気ケトルがあると便利
お湯の温度を一定に保ちたいときに便利なのが、温度設定ができる電気ケトルです。
例えば、ティファールの「カフェ ロック コントロール」は、40・60・70・80・85・90・95・100℃の8段階で温度を設定できます。
さらに、ドリップしやすい注ぎ口や保温機能も備わっています。
こうしたケトルがあれば、毎回お湯を沸かしてから冷めるのを待つ必要がなく、狙った温度からドリップを始めやすくなります。
また、今日は90℃、次は85℃というように条件を変えて飲み比べることもできます。
温度を一定に保ちやすくなることで、豆や挽き目、注ぎ方の違いも比較しやすくなります。
コーヒーを淹れる時間そのものを楽しむためにも、温度設定のできるケトルは、ドリップライフを充実させてくれる道具のひとつです。
温度設定ができるケトルがなくても大丈夫!
「温度設定ができるケトルを持っていない」という方も、ご安心ください。
普通の電気ケトルややかんでも、お湯の温度を調整する方法があります。
おすすめしたいのが、沸騰したお湯を別の容器に移し替える方法です。
沸騰したお湯を常温のドリップポットなどに移すと、容器に熱が移るため、お湯の温度が下がります。
移し替える容器の素材や大きさ、お湯の量、室温によって温度の下がり方は変わりますが、沸騰直後のお湯をそのまま使うよりも、温度を落ち着かせやすくなります。
手順はとても簡単です。
- いつも通り、電気ケトルややかんでお湯を沸かす
- 沸騰したお湯を、別のドリップポットなどに移す
- 移し替えたお湯を使って、いつも通りドリップする
この方法なら、特別な機能がついたケトルを買わなくても、温度を意識したコーヒーの抽出ができます。
もう少し温度を下げたい場合は、さらに別の容器へ移し替える方法もあります。
ただし、移し替える回数だけで正確な温度が決まるわけではありません。容器や室温によって変化するため、温度計があれば実際に測ってみるのもよいでしょう。
大切なのは、毎回同じ容器を使い、同じ手順で移し替えることです。
厳密な温度が分からなくても、毎回の手順をそろえることで、抽出条件のばらつきを抑えやすくなります。
ドリップする前に、器具とカップを温めましょう
お湯の温度を整えたら、次に意識したいのが器具の予熱です。
コーヒーを淹れる前に、次のものへお湯をかけて温めておきましょう。
- サーバー・抽出容器:抽出したコーヒーを受ける容器
- ドリッパー:コーヒー粉をセットする器具
- 飲むためのカップ:できあがったコーヒーを注ぐ器
それぞれにお湯をかけ、全体を温めてから使います。予熱に使ったお湯は捨ててください。
冷たい器具に熱いお湯を注ぐと、器具に熱が移り、お湯やコーヒーの温度が下がります。
特に冬場は、冷えたドリッパーやサーバー、カップに熱を奪われやすくなります。
せっかく適温のお湯を用意しても、器具が冷たいままでは、その温度を十分に活かせません。
抽出前に器具を温めておくことは、コーヒーの温度を保つための大切なひと手間です。
カップの温度も、飲み心地を左右する
カップを温める理由は、コーヒーの温度を保つことだけではありません。
コーヒーを飲むとき、私たちは味や香りだけでなく、唇がカップに触れたときの感触も感じ取っています。
冷たいカップに温かいコーヒーを注ぐと、コーヒーの温度が下がるだけでなく、唇に触れる器の冷たさも感じます。
反対に、カップが適度に温まっていると、飲み始めの温度差が小さくなり、コーヒーと器が自然になじむような飲み心地になります。

こうした感覚は、カップの形状や厚み、素材によっても変わります。
コーヒーを楽しむ時間をより豊かなものにするために、カップにも少しこだわってみてはいかがでしょうか。
お気に入りの器を選ぶことも、ドリップコーヒーの楽しみのひとつです。
夏と冬では、温度管理も変わります
同じ温度のお湯を使っていても、季節や室温によって抽出中・抽出後の温度変化は異なります。
例えば冬場は、冷えたドリッパーやサーバー、カップに熱を奪われやすく、抽出したコーヒーも冷めやすくなります。
一方、夏場は室温が高いため、冬に比べて器具やコーヒーが冷えにくい傾向があります。
そのため、特に寒い季節は器具やカップをしっかり予熱しておくことが大切です。
また、飲むときの温度によっても、香りや味わいの感じ方は変化します。
季節や室温に合わせて、抽出温度だけでなく、器具の予熱や飲むタイミングも意識してみましょう。
まとめ
コーヒーのおいしさは、お湯の温度だけで決まるものではありません。しかし、温度を意識することで、抽出の条件を調整し、自分好みの味わいを探しやすくなります。
今回のポイントを振り返ってみましょう。
- まずは90℃前後を基準にしてみる
- 豆の焙煎度や挽き目、好みに合わせて温度を調整する
- 温度は成分の溶け出す速さに影響するが、味わいは抽出全体のバランスで決まる
- 温度設定ができるケトルがあると、抽出条件を管理しやすい
- 温度設定ができない場合は、沸騰したお湯を別の容器に移し替えて温度を落ち着かせる
- ドリップ前にサーバー・ドリッパー・カップを予熱する
- 夏と冬では器具やコーヒーの冷め方が変わるため、季節に合わせた温度管理を意識する
温度設定のできるケトルがなくても、ちょっとした工夫でコーヒーの温度を調整できます。
コーヒー豆や抽出器具だけでなく、お湯の温度や飲む器にも目を向けると、いつもの一杯がさらに楽しくなります。
ぜひ、ご自身の環境に合った温度管理の方法を見つけてみてください。
参考文献・参考資料
- Batali, M. E., Ristenpart, W. D., & Guinard, J.-X. (2020). Brew temperature, at fixed brew strength and extraction, has little impact on the sensory profile of drip brew coffee. Scientific Reports.
- Specialty Coffee Association (SCA). Coffee Standards.
- ティファール|カフェ ロック コントロール